こんにちは。佐藤ゆうすけです。
 前回は、飯能市が発表した「持続可能な行財政運営に向けた緊急財政対策について」から、市がこのような発表をすることになった経緯を説明しました。
 今回は緊急財政対策の概要について説明すると同時に、私の考えを説明させていただきます。(25分程度で読めると思います)

緊急財政対策の引用と言い換え

 まずは上記のリンクからの引用→私なりの言い換えという形で、緊急財政対策について確認します。行政の表現は硬くて、わかりにくいからです。
 なお、重点対策「4.普通建設事業の選択と集中」については、私のほうで一部リンクを追加しています。
 また、その際、私が重視したいと思っている点については、アンダーラインをしています。

目的
 市民福祉の増進と山積する行政課題の解決に向けて的確に対応するため、将来にわたり持続可能な行財政運営を確立することを目指し、緊急財政対策を実施します。

目的(この対策をする理由)
 市は、これからも市民のみなさんの暮らしをより良くしていくため、そして今かかえているさまざまな問題(少子高齢化、施設の老朽化など)にしっかり対応していくために、将来にわたって安定してお金をやりくりできるようにすることを目指しています。
 そのために、今すぐやらなければならない「緊急財政対策」を行うことにしました。

目標
1.令和8年度末までに財政調整基金の残高を本市の標準財政規模の約1割に相当する20億円以上確保します。
2.歳入規模に応じた、適正かつ持続可能な予算規模を見極め、歳入に見合った歳出への転換を図ります

目標(めざすこと)
1.市では、令和8年度(2026年度)の終わりまでに「財政調整基金」(いざという時のための貯金)を20億円以上ためることを目標にしています。これは、市の1年分の予算の約10%にあたります。
2.今後は、収入に合った予算(お金の使い方)に切り替えて、ムダをなくし、ずっと続けられるような財政のバランスを目指します

重点対策
1.総人件費の抑制(正規及び会計年度任用職員数の適正化)
2.市単独事業の見直し(事務事業の廃止、休止、縮小等)
3.公共施設等の在り方の見直し(公共施設等の再編・再配置の加速化)
4.普通建設事業の選択と集中(土地区画整理事業飯能第一小学校等の建替え及び複合化久下六道線整備元加治駅南口開設、道の駅整備等の優先度)
5.自主財源の確保(収納対策の強化、受益者負担の適正化)

重点対策(特に重点的に取り組むこと)
1.職員にかかる費用をおさえる
 正規職員やアルバイトなどの人数を見直して、人件費(人を雇うお金)を減らします。
2.飯能市だけでやっている事業の見直し
 市が独自に行っている取り組みを、一部やめたり、小さくしたり、いったん止めたりします。
3.公共施設の使い方を考え直す
 古くなった建物などを整理して、使いやすい配置にするなどの見直しを早く進めます。
4.建設事業の優先順位をつける
 すべての工事を一度にやるのではなく、特に大事なものから順にやるようにします。
5.市の収入をふやす
 税金や料金の未納を減らしたり、サービスを利用する人には適切な負担をお願いするなど、収入アップに取り組みます。

対策期間
 令和7年度から令和8年度までの2年間
推進体制
1.飯能市緊急財政対策本部(本部長:市長)による決定、実施
2.職員で組織する緊急財政対策プロジェクトチームによる検討、立案
3.学識経験者等で組織する飯能市行政改革審議会による審議、提言

 これらの言いかえは、省略します。とりあえずこんな感じでしょうか。

緊急財政対策は、今までのお金の使い方についての反省である

 まず、「目的」のアンダーラインの箇所からわかるのは、「これからは収入に合った予算(お金の使い方)に切り替えます」という、これまでのお金の使い方への反省と決意です。前回の投稿でも述べましたが、やはり飯能市は今まさに、「これまでのお金の使い方を踏まえたうえで、考え直す時期に来ている」わけです。
 では、近年の飯能市は、どのようなお金の使い方をしてきたのでしょうか?
 内容は多岐にわたりますが、私の重視したい政策との重なりから、重点対策の中から大きく2つの点についてコメントします。

財政の見直しポイント①地理情報データや交通情報データから、建設事業の優先順位をつける

 ここ数年の飯能市のお金の使い方が最もわかりやすいのは、この重点対策だと思います。
 飯能市はこの数年、久下六道線整備元加治駅南口開設のような大きな建設工事を進めています。大規模な建設工事はいわば飯能市という「器(ハード)」を作るようなもので、重要な取り組みです。しかし同時に人を雇い、資材を用意するために、大きなお金と労力がかかります。
 さらに前回も述べたように、この数年、飯能市は20年前の合併時の工事のお金を返し続けていました。大規模な工事を行うにしても、時期を誤ったのではないかと思います。
 特に久下六道線工事については、その概要の中で「「安心安全な通行空間」、「回遊・滞在できる快適な空間」の創出に向けた改良整備」のための工事だとされており、私も関心を持っています。私も買い物などでこの辺りを通る際、道が狭いなと思うことはよくありました。
 しかし、通行の改善は、道路工事以外にも、交通データを活用して交通渋滞を緩和を促す方法もあります。このような取り組みにもお金はかかりますが、資材費や実施期間・人件費などの総合的な費用は工事よりは低く抑えられます。
 飯能市は3月3日に、飯能市の都市計画関連情報、市道等路線情報、ハザードマップ、飯能市の見どころを掲載したハイキングマップなどの地図情報を掲載した飯能市GIS(地理情報システム)のポータルサイトを公開しました。私も拝見しましたが、痒い所に手が届かない感じかな、という印象です。
 とはいえ新しい取り組みなので、活用方法は無限にありそうで、とても期待もしています。例えば、交通量のデータに基づいて、道路の中で交通量の多かったり渋滞の発生しやすかったりする時間帯・曜日を掲載する、公共交通機関(主にバス)の路線図を掲載するなど、使う側の目線に立った運用方法を市と協働しながら考えていきたいと思います。
 

財政の見直しポイント②市の収入を増やすために、移住支援を拡大・発展する

 市の収入を確保する方法の具体例として、「収納対策の強化、受益者負担の適正化」つまり税金や料金の未納を減らしたり、サービスを利用する人には適切な負担をお願いする、というのが市の現在の方針です。
 ただ、重要ですがこれらはある意味当たり前のことで、ちょっと弱いかな、と感じています。
 私は、移住支援を拡大・発展させることが、最小限の負担で最大限の効果を発揮するのではないかと考えています。
 住宅情報館の調査によると、首都圏の人口5万人以上の市区町村の中で、飯能市は2023年(1年間)の年少者(0~14歳)人口の増加率が最も高かったと指摘されています(詳しくは、こちら)。同記事では、「子育て世帯の住まい探しが、これまで人気の高かった東京に隣接する近郊エリアから、飯能市、茅ヶ崎市、印西市といった50キロ圏の郊外エリアに移って来ている」とされており、このエリアは「住みやすさと価格のバランス」が良い、とされています。
 では、このような「子育てと働くことのバランスの良さ」というニーズに対して、飯能市の移住支援はどのようなものがあるのでしょうか
 詳しくは次回以降で投稿しますが、飯能市の移住支援金制度を見ると、このようなニーズを的確に把握できているのか、やや疑問です。一言で言うと「自分の理想を押し付けすぎており、移住希望者にとって魅力ある制度ではない」と感じます。
 人の移住は、「プッシュ要因」と「プル要因」という用語で説明できます。移住の「プッシュ要因」とは、家賃が上がったとか、天災や事故などで今住む場所から離れなければいけなくなったとか、今住んでいる場所から「押し出される」要因のことです。これに対して移住における「プル要因」とは、働く場所と住む場所が近いとか、子育て支援策が充実しているとか、今住んでいる場所から移住先へと人を引き寄せる要因(魅力)のことを指します。
 例えば農のある暮らしは、生活の中で都市的な利便性と自然との親しみを同時に体験できる飯能の魅力を活かした、素晴らしい取り組みの一つですね。
 しかし、大事なのは、「移住支援策」も「プル要因」になるということです。つまり移住支援には、「移住を希望する人を引き寄せようとする、魅力的な支援策」を用意することも大事です。
 魅力的な移住支援を考えるためには「外の視点」が必要です。つまり「どのような移住支援制度があれば、移住するか」という「移住希望者のニーズ」をきちんと把握しないと、魅力的な移住支援はできません
 私自身も飯能市外からの移住者で、「外の視点」と「中の視点」のどちらも経験しています。
  その経験をベースに、飯能への移住者、そして移住希望者に対しての意識調査を通じて、魅力的な移住支援策を拡大・発展させ、飯能市を盛り上げていきたいと考えています。

 長くなりましたが、以上です。お読みいただきありがとうございました。
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